企業が従業員に対して食事を支給・補助する場合、一定の要件を満たせば所得税が非課税になる制度があります。2024年度の税制改正により、非課税の上限額は月額3,500円から月額7,500円に引き上げられました。
この改定は、食事補助を導入している企業にとっても、これから導入を検討する企業にとっても大きな変化です。しかし、「具体的にどんな条件を満たせば非課税になるのか」「改定後の経理処理はどう変わるのか」が分かりにくいという声も少なくありません。
この記事では、食事補助の非課税要件、2024年改定の詳細、非課税枠を活かしたサービスの選び方、そして経理処理の具体例までを一本の記事で解説します。
食事補助の非課税要件
企業が従業員に食事を支給した場合、原則として「現物給与」として課税対象になります。ただし、国税庁タックスアンサー No.2594「食事を支給したとき」によると、以下の2つの要件を両方とも満たす場合に限り、非課税となります[1]。
非課税の2要件
- 従業員が食事の価額の50%以上を負担していること
- 企業が負担する金額が月額3,500円以下であること(2024年改定後は月額7,500円以下)
この2つはどちらか一方ではなく、両方を同時に満たす必要があります。
非課税になるケース/ならないケースの具体例
| ケース | 食事の価額 | 従業員負担 | 企業負担 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| A | 月額10,000円 | 5,000円(50%) | 5,000円 | 非課税(企業負担7,500円以下かつ従業員負担50%以上) |
| B | 月額10,000円 | 3,000円(30%) | 7,000円 | 課税(従業員負担が50%未満) |
| C | 月額20,000円 | 10,000円(50%) | 10,000円 | 課税(企業負担が7,500円超) |
| D | 月額6,000円 | 0円(0%) | 6,000円 | 課税(従業員負担が50%未満=全額企業負担) |
残業食事との違い
残業や宿日直のために食事を支給する場合は、上記の2要件とは別の取り扱いになります。残業食事は「通常の勤務時間外に支給される食事」として、その全額が非課税となります(所得税基本通達36-24)[1]。この記事で解説する非課税枠は、通常の勤務時間中の食事補助に適用されるものです。
つまり、食事補助が非課税になるには「従業員が半額以上を負担」かつ「企業負担が月額7,500円以下」の2要件を同時に満たす必要があり、どちらか一方でも欠けると全額が課税対象になります。
2024年改定のポイント
2024年度の税制改正(令和6年度税制改正大綱)により、食事補助の非課税上限額が大幅に引き上げられました[2]。
改定前後の比較
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 企業負担の非課税上限(月額) | 3,500円 | 7,500円 |
| 従業員負担の要件 | 食事価額の50%以上 | 変更なし |
| 施行日 | — | 2024年1月1日以後に支給する食事から適用 |
改定の背景
非課税上限の3,500円という金額は、1988年の設定以来30年以上据え置かれていました。この間に物価は大きく上昇し、月額3,500円で提供できる食事の質や量には限界が生じていました。
改定の主な背景は以下の通りです。
- 物価上昇への対応:食料品の消費者物価指数は1988年比で約30%上昇しており、従来の上限額では実態に合わなくなっていた
- 食の福利厚生の重要性の高まり:健康経営や従業員のウェルビーイングへの関心が高まり、食に関する福利厚生の充実を求める声が増加
- 企業の導入促進:上限額の引き上げにより、より多くの企業が食事補助を導入しやすい環境を整備する狙い
企業への実務的な影響
改定によって、企業は従来よりも充実した食事補助サービスを非課税で提供できるようになりました。具体的には、以下のような選択肢が広がっています。
- 1食あたりの補助額を引き上げ、より高品質なメニューを提供できる
- 設置型社食で提供する品数を増やせる
- 食事補助アプリの月額利用上限を引き上げられる
つまり、2024年改定で非課税上限が3,500円から7,500円に倍増したことで、企業が食の福利厚生に投資できる余地が大幅に広がりました。
非課税枠を活かすサービスの選び方
非課税枠を最大限に活用するには、「非課税要件に対応したサービス」を選ぶことが実務上のカギになります。ここでは、食事補助の非課税枠に対応した主要サービスの比較と、具体的なシミュレーションを紹介します。
非課税対応サービスの比較
| サービス名 | 月額目安(1名あたり) | 非課税対応の仕組み | 特徴 |
|---|---|---|---|
| チケットレストラン | 3,500〜7,500円 | 電子カードに企業と従業員が半額ずつチャージ | 全国のコンビニ・飲食店で利用可能。利用範囲の広さが強み |
| びずめし | 3,500〜7,500円 | アプリ経由で加盟飲食店の食事を補助 | 地域の飲食店と連携。地方拠点でも使いやすい |
| OFFICE DE YASAI | 約4,000円〜 | 設置型社食として食事を現物提供、従業員が1品ごとに一部負担 | 惣菜・サラダ中心。健康志向のオフィスに適している |
| nosh Business | 約3,500円〜 | 冷凍弁当を法人価格で提供、従業員が半額以上を負担する形で設計可能 | 管理栄養士監修メニュー。メニュー数が豊富 |
※ 料金は2025年時点の各社公開情報に基づく目安です[3][4]。
シミュレーション:非課税枠を最大限使う場合
従業員50名の企業が、食事補助を月額7,500円の非課税枠いっぱいまで活用するケースを試算します。
- 食事の月額価額:15,000円(1名あたり)
- 従業員負担:7,500円(50%)
- 企業負担:7,500円(50%、非課税上限ちょうど)
- 企業の月額負担合計:7,500円 × 50名 = 375,000円
- 年間企業負担:4,500,000円
同じ金額を「給与」として支給した場合、企業側の社会保険料負担(約15%)が追加で発生するため、約675,000円のコスト増になります。非課税の食事補助として支給することで、この社会保険料分を節約できます。
非課税枠を超えた場合の影響
企業負担が月額7,500円を1円でも超えると、超えた分だけでなく企業負担の全額が課税対象になります。たとえば企業負担が月額8,000円の場合、8,000円全額が給与として課税されます。枠を超えないよう、料金設計には注意が必要です。
より多くのサービスを比較したい方は、食事補助サービスの比較ページをご活用ください。
経理処理の具体例
食事補助の経理処理は、非課税か課税かによって勘定科目と仕訳が変わります。ここでは、実務で頻出する2パターンの仕訳例を示します。
パターン1:非課税の場合(要件を満たすケース)
食事補助サービスの月額利用料10,000円を、企業5,000円・従業員5,000円で折半する場合。
| 取引 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 企業がサービスに支払い | 福利厚生費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
| 従業員から天引き | 給与 | 5,000円 | 福利厚生費 | 5,000円 |
企業の実質負担5,000円は「福利厚生費」として処理します。非課税要件を満たしているため、従業員の給与所得には算入されません。
パターン2:課税の場合(要件を満たさないケース)
企業が食事補助を月額10,000円全額負担する場合。
| 取引 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 企業がサービスに支払い | 福利厚生費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
この場合、勘定科目は「福利厚生費」のままですが、税務上は従業員の給与として扱われます。企業負担の10,000円全額を従業員の給与所得に算入し、源泉徴収と社会保険料の計算対象に含める必要があります。
勘定科目の判断基準
| 条件 | 勘定科目 | 税務上の取り扱い |
|---|---|---|
| 非課税要件を満たす | 福利厚生費 | 従業員の給与所得に算入しない |
| 非課税要件を満たさない | 福利厚生費(会計上)/給与(税務上) | 従業員の給与所得に算入する |
| 現金で食事代を支給 | 給与 | 全額が給与所得(現金支給は非課税の対象外) |
月次処理の流れ
- 食事補助サービスから月次の利用明細を受領
- 従業員ごとの利用額と企業負担額を集計
- 非課税要件(従業員負担50%以上 かつ 企業負担月額7,500円以下)の判定
- 要件を満たす場合 → 福利厚生費として処理、源泉徴収の対象外
- 要件を満たさない場合 → 給与所得に算入し、源泉徴収額を再計算
- 年末調整で最終的な過不足を精算
なお、食事補助サービスの利用料は消費税法上の「課税仕入れ」に該当します。仕入税額控除の対象となるため、消費税の申告時に留意してください[1]。
まとめ
食事補助の非課税枠は、「従業員が食事価額の50%以上を負担」「企業負担が月額7,500円以下」の2要件を満たすことで適用されます。2024年の税制改正で上限額が3,500円から7,500円に引き上げられたことにより、企業が食の福利厚生に投資できる余地は大きく広がりました。
非課税枠を最大限に活かすためには、要件に対応したサービスを選定し、企業負担額が上限を超えない料金設計を行うことが重要です。
食事補助制度の導入や見直しをお考えの方は、非課税枠に対応したサービスの比較から始めてみてください。非課税枠の活用ガイドや経理処理の参考資料はお役立ち資料一覧からダウンロードいただけます。制度設計に不安がある場合は、無料の導入相談もご利用いただけます。